主催: 水文・水資源学会
会議名: 水文・水資源学会2024年度研究発表会
開催日: 2024/09/10 - 2024/09/12
印旛沼地域に導入された循環灌漑は、水田の脱窒作用などによる印旛沼への栄養塩類の流出負荷削減効果の発揮を期待されている。水田からの排水は低地排水路に集められ、一部は印旛沼に排水され、一部は印旛沼の水とともに取水されたのちパイプラインで水田に送水される。利水面の利便性を損なうことなく循環灌漑による水質改善効果を向上させるには、低地排水路内の水量、水質を正確に予測し、それらに応じてきめ細かに機場操作を行うことが必要である。そして、機場操作の根拠を示すために流量と水質を予測するモデルが必要となる。玉川(2022)はタンクモデルを用いて低地排水路の水位を表すモデル(以下旧モデル)を作成したが、そのNush, Sutcliffe Efficiency (以下NSE )はNSE=-1.024であり、その向上が求められる。本研究では、現地水路形状の反映及びパラメータの修正によって旧モデルの適合度向上を図った。旧モデルでは低地排水路断面が長方形断面として扱われていたので、印旛沼二期農業水利事業所から提供された図面をもとにモデル演算内で現地水路形状を再現した。その結果、モデルはNSE=-4.73を示し、適合度は著しく悪化した。水量と水位との関係が大きく変化したこと、低地排水路の水位が変化したことで、計算水位に基づいて生じる低地排水路と隣接した圃場からの地下水流入の量が変化したことが原因と考えられる。この水路形状を前提として新たにパラメータを設定する必要性が認められた。そこでパラメータ修正においては、予備検証の結果を踏まえ圃場タンクのパラメータ5つに着目した。それぞれについて、他のパラメータの値を固定した状態でパラメータの値を変化させ、パラメータ変化によって生じるNSEや低地排水路水位の計算値の変化、タンク貯留高を観察した。その後、把握したパラメータの性質をもとに試行錯誤を行い、優良なパラメータの組み合わせを探査した。圃場1段目タンクの表面流出孔係数、圃場二段目タンクの低地排水路に接続された地下流出孔係数の変化が特に適合度変化に影響を及ぼした。その他のパラメータ操作も踏まえ適切なパラメータの組み合わせを試行錯誤したところ、NSE=0.17を持つモデルが作成された。地下水流出や低地排水路から小排水路への逆流といった現象を再現するためには、より短い計算時間間隔でのモデル化が必要だと思われる。