日本集中治療医学会雑誌
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総説
ICUにおける静脈血栓塞栓症予防 —とくに新世代の抗凝固薬について—
射場 敏明和田 英夫
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2012 年 19 巻 2 号 p. 177-184

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抄録

ICUにおける静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism, VTE)予防を目的とした抗凝固療法は,海外では標準治療とされている。しかし本邦では,未だ十分に普及しているとはいえない。普及を妨げている要因の一つは,使用される未分画ヘパリンやワルファリンの出血リスクや調節性の問題であるが,現在はこれらの欠点を改善した薬剤が開発されている。低分子量ヘパリンであるエノキサパリンと活性化凝固第X因子(Xa)阻害薬であるフォンダパリヌクスは,ともに血中濃度が安定し個体差が少なく,半減期が長いために1~2回/dayの皮下投与が可能である。しかし半減期が長い点については,一旦出血した場合には対応に苦慮することにもなる。これらのアンチトロンビンを介する間接的Xa阻害に加えて,直接Xaを阻害する新薬の開発が精力的に進められており,これまでのところ良好な成績が報告されている。これらの新薬を加えて,ICUにおけるVTE予防は新時代を迎えようとしている。

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© 2012 日本集中治療医学会
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