日本集中治療医学会雑誌
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総説
PIRO scoreによる臨床研究が敗血症治療の活路を拓く?
山口 修
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2012 年 19 巻 4 号 p. 569-577

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抄録

現在の集中治療医学の最重要課題の一つが,敗血症の克服である。しかし,これまでの多くの臨床研究の中で明確な有効性を証明できた治療戦略は少なく,対象患者の選定基準が原因の一つとされる。感染が原因で全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome,SIRS)状態にあれば,敗血症と定義される。しかし,SIRSの診断基準は特異性に乏しく患者の重症度や病態を反映していない。そこで,腫瘍学の世界のTNM分類にならい提唱されたのがPIRO scoreである。Pはpredisposition(背景,素質),Iはinsult/infection(侵襲/感染),Rはresponse(反応),Oはorgan dysfunction(臓器障害)を意味し,各々のカテゴリーをスコア化して敗血症の進行度を分類しようとするものである。各カテゴリーを構成する内容は,重症敗血症,市中肺炎,院内肺炎などでモデルが提唱され,実際の患者の予後を良く反映することが証明されつつある。このPIRO scoreにより重症度を均質化した臨床研究が期待されている。

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© 2012 日本集中治療医学会
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