2017 年 24 巻 5 号 p. 535-541
救急/集中治療領域で気管挿管困難症に遭遇する確率は手術室より遥かに高く,かつ気道確保の失敗は致命的な結果を招く。一刻の猶予も許されない状況で使用するレスキューデバイスは「迅速,単純,容易」に操作できなければならない。声門上器具はこれらの観点からはほぼ理想的なデバイスであり,近年麻酔科領域のみならず,救急/集中治療領域のdifficult airway management(DAM)でもその有用性を示す報告が増加している。しかし,本邦の救急/集中治療領域における声門上器具の普及率は諸外国に比して低く,現状では声門上器具が適切に配備されているとは言い難い。一刻を争う事態での安全を確保するために,声門上器具を含め,平時より適切なDAMデバイスを配備し運用しておくことが望まれる。本稿を通し,救急/集中治療領域のDAMにおける声門上器具の役割を再考する。