日本集中治療医学会雑誌
Online ISSN : 1882-966X
Print ISSN : 1340-7988
ISSN-L : 1340-7988
症例報告
下大静脈部分切除を伴う膵頭十二指腸切除術後,下大静脈閉塞による急性腎傷害の一例
濵田 奈保濵田 暁前迫 大樹合田 慶介清水 達彦小川 達彦鬼頭 英介難波 健利
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 26 巻 3 号 p. 181-185

詳細
抄録

下大静脈(inferior vena cava, IVC)部分切除後の急性腎傷害の報告は少ない。我々は,IVC部分切除後に腎静脈還流障害による急性腎傷害を生じた症例を経験したので報告する。症例は70歳,女性,膵頭十二指腸切除術を施行し,腫瘍浸潤のため腎静脈合流部IVCを部分切除した。術後,輸液に反応不良の尿量減少,Cr値上昇を認め,造影CTで腎静脈合流部IVCの閉塞,右腎腫大を認めた。腎静脈還流障害による急性腎傷害と診断し,腎灌流圧上昇により糸球体濾過量を増加させる目的で,輸液,ノルアドレナリン,バソプレシン投与を行い,平均血圧を術前の120%以上に上昇させることで尿量増加,Cr値改善を得た。その後,造影CTで,側副血行路の形成,右腎腫大の改善を認めた。以後の経過は良好であった。IVC部分切除を伴う膵頭十二指腸切除術後に輸液に反応不良の尿量減少を認めた場合,腎静脈の還流障害を鑑別する必要がある。

著者関連情報
© 2019 日本集中治療医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top