抄録
CD4(+),CD56(+)悪性リンパ腫は稀な疾患であるが,急速進行性で悪性度が高く,腫瘍細胞の皮膚浸潤が特徴である。症例は76歳男性。背部皮下腫瘤を自覚して2週間後,呼吸困難が出現し,急速に増悪した。胸部単純X線写真にて両肺野のびまん性浸潤影を呈し,人工呼吸管理が必要となった。リンパ節生検および気管支肺胞洗浄(BAL)により,CD4(+),CD56(+)悪性リンパ腫の肺浸潤が急性呼吸不全の原因として考えられ,化学療法を行った。化学療法後,呼吸状態は急速に改善し,人工呼吸器から離脱した。胸部単純X線写真において両側びまん性浸潤影を呈する急性呼吸不全が生じた場合,稀ではあるが悪性リンパ腫細胞の肺浸潤を鑑別診断に入れる必要がある。確定診断にはBALが有用と考えられる。CD4(+),CD56(+)悪性リンパ腫の肺浸潤例,化学療法による急性呼吸不全の寛解例は報告がなく,貴重な症例と考えられた。