抄録
肺サーファクタントの絶対的欠乏による新生児呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome; RDS)に対する人工肺サーファクタント補充療法は,未熟児の救命率を飛躍的に向上させた。一方,肺サーファクタントが機能的に阻害された病態(胎便吸引症候群,肺炎,急性呼吸窮迫症候群,肺出血)に対しても,この補充療法が検討されている。また肺低形成では,RDS類似の肺の未熟性がみられ,出生後早期に人工肺サーファクタントを投与することによって,呼吸機能の改善が期待できる。最近,人工肺サーファクタント投与による免疫系細胞の機能抑制の問題が明らかにされており,また親水性肺サーファクタント蛋白質の肺局所免疫としての役割がクローズアップされて,次世代の人工肺サーファクタント開発にあたっての問題点を提起している。