抄録
頸部血管腫の急速な増大により気道狭窄をきたしたKasabach-Merritt症候群の1症例を経験した。症例は2ヵ月の女児で,左側頭部から頸部にかけて広がる巨大血管腫,および血小板数減少・凝固因子低下を認め,Kasabach-Merritt症候群と診断した。診断確定後直ちにプレドニゾロンの投与を開始したが症状の改善を認めず,腫瘍はさらに増大して気道狭窄をきたしたため,ICUに収容し気道確保を行った。同日よりインターフェロン-α-2aの併用投与を開始するとともに全身麻酔下に動脈塞栓術を施行したところ,腫瘍は著明に縮小し,無事気管チューブを抜管することができた。術後6日目より血小板数も増加傾向を示し,腫瘍の再発や血小板数減少を認めることなく軽快退院することができた。本症例のように急速に増大する腫瘍により致死的な圧迫症状を呈する症例においては,従来の薬物療法とともに早期の動脈塞栓術の施行も有効であると考えられた。