抄録
重症破傷風2症例にイソフルラン(ISO)とダントロレン(DNT)を使用し,筋強直と循環変動に対し良好な結果を得たので報告する。症例1は,最初の6病日間に血管作動薬投与と硬膜外麻酔を行ったが収縮期血圧は153±29mmHg(mean±SD)とばらつきが大きく,循環変動を制御できなかった。第7病日よりISO吸入を行い,収縮期血圧を135±15mmHgに維持できた。DNTを第41病日より投与した結果,筋強直が軽減し,第51病日にICUを退室した。症例2はISO吸入を初期より行い,循環変動を制御したが,ISO離脱を図るごとに著明な循環変動と筋強直が再現した。第18病日からDNTを投与した結果,筋強直の改善に伴い第37病日にISO吸入から離脱ができ,第41病日にICUを退室した。ISOは初期の重症破傷風管理に極めて有効で,DNTは筋強直を改善し,ISOからの離脱を促進したと示唆される。