アセトアミノフェン内服量が60mg・kg-1と中毒量としては少量であるにもかかわらず,重篤な肝障害をきたした症例を経験した。アセチルシステイン投与に加え血液浄化法を施行し治癒させることができたので報告する。患者は16歳,女性。自殺目的で市販の解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンとして2.7g)を内服し,意識障害,嘔吐,尿失禁を認め入院となった。内服8時間後に肝逸脱酵素の上昇,第2病日にトロンボテストの低下を認め,血液浄化を目的にICUに収容し,第2,3病日に血漿交換(PE),第2~7病日に持続的血液濾過(CHF)を施行した。肝障害は第4,5病日をピークに徐々に改善し,第8病日に一般病棟へ転室した。重篤な肝障害をきたした原因として,患者が頭痛時などに内服していた他の消炎鎮痛薬や,市販薬に含まれていたブロムワレニル尿素およびエテンザミドの影響が考えられる。アセトアミノフェン中毒では内服が少量でも重篤な肝障害をきたす可能性があり,注意深い観察が必要である。