情報通信学会誌
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論説
米国における地上放送局に対する行為規制を通じた「放送の地域性」の確保のための制度的措置
海野 敦史
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2016 年 34 巻 2 号 p. 125-135

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抄録

「放送の地域性」が放送政策の重要理念の一つとなってきた米国においては、さまざまな形でその制度的確保に向けた取組みが行われてきたが、特に直截的な措置として注目されるのが、地上放送局の免許付与に関して一定の行為規制を連邦通信委員会(FCC)が課すものである。その具体的な方法をめぐっては、米国憲法修正1条との関係から番組規律を最小限に抑えることに対する必要性が生じることを背景として、古くから FCC が試行錯誤を繰り返してきたが、2000 年に低出力 FM ラジオ放送局免許が創設されて以来、かかる行為規制を充実させるための取組みが顕著になっている。とりわけ、地上放送局と地域社会との対話の強化を指向した地域の番組の取扱い等に関して「公共検査ファイル」による情報開示を義務づけるための規律がその中心的地位を占めている。この公共検査ファイルによる情報開示については、FCC のオンライン上の統合データベースに掲載されることとなっており、近年は地上放送局のみならず CATV 事業者や衛星放送事業者等についても同様の義務が課されるなど、拡充される傾向にある。

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