2025 年 43 巻 1 号 p. 50-62
本研究は、災害時における X(Twitter)に投稿された情報の、迅速かつ効果的な情報共有を実現するための基盤を提供することを目指している。膨大な情報の中から重要な情報を効率的に抽出することが求められている。しかし、災害時における SNS を利用した情報収集では、信頼性を担保しつつ、特に救助要請ツイートの取りこぼしをしないことが大きな課題となる。信頼性を担保するためには、人手による判断を行うほかなく、計算機科学の分野で広く行われているようなテキストマイニングによるピンポイントな情報抽出では重要な情報の取りこぼしが発生する懸念がある。そこで本研究は、ノイズとなる情報のみを除去することで、重要な情報を取りこぼすことなく残し、その後残った情報を人手で精査するという、人と計算機の協調による情報収集を試みる。このアプローチを用いることで、人手による検証コストを軽減しつつ取りこぼしのない情報抽出が可能になると期待される。本稿では、実際に残すべき情報とノイズとなる情報の整理を、投稿画像と投稿文章の両方の観点から行った。その結果、人的判断の必要性が高い情報として、機械的に収集した投稿のうち0.564% の投稿まで絞り込むことが可能であることを確認した。