早場米の生産が行われている三重県松阪市上七見町の水田において,魚類の移入と移出の実態を調査した.水田は立地条件によって水管理に違いが見られ,上流に位置する水田では取水とともに水口から魚類が移入したのに対し,下流の水田では降雨時に排水路の水が逆流したために取水がほとんど行われず,魚類は主に水尻から移入した.いずれの水田でもドジョウとメダカが繁殖し,下流の水田は他の魚種も含め増水時の退避場としても利用されていた.しかしながら,1)メダカは4月中旬から下旬にかけて早い時期に移入したのに対し,ドジョウは遅れて5月以降に移入数が増加し,移入から中干しまでの期間が短かったこと,2)作期が2ヶ月遅い東京都国立市の水田と比較して,調査対象水田から中干し時に移出した未成魚以下のドジョウの体長が有意に小さかったことから,作期が早期化すると繁殖・成育時期と作期との間にずれが生じ,魚類が水田を利用しにくくなる可能性がある.