2009 年 77 巻 6 号 p. 657-665
全国の農業水利施設について,既存施設の有効活用を図りライフサイクルコストを低減する「ストックマネジメント」の取り組みが始まった.ストックマネジメントにおいて,施設の将来の状態を予測する「劣化予測」は,機能保全対策の検討や機能保全コストの算定に不可欠なプロセスであり,精度の高い予測手法の構築が重要な課題となっている.
そこで筆者らは,全国の国営造成施設を対象に実施されている広域基盤整備計画調査の機能診断データを分析することにより,マルコフ連鎖を適用した施設群の劣化進行モデルを作成し,農業水利施設の工種区分および施設区分ごとの劣化特性を明らかにした.