農業農村工学会論文集
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田んぼダムの落水量調整に求められる要件と垂直設置型調整板の適切な流出孔形状
吉川 夏樹小出 英幸三沢 眞一
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2010 年 78 巻 4 号 p. 273-279

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抄録

田んぼダムの中核施設である落水量調整板の孔形状の設計においては,以下の具備すべき要件を踏まえることが重要である.(1)大きなピーク流出量抑制効果,(2)過剰な田面湛水の回避,(3)日常水位管理への影響の軽減,(4)ゴミ詰まりによる流出孔閉塞の回避.本研究では,垂直設置型調整板を対象に,室内実験およびシミュレーションにより上記要件を満たす孔形状および孔断面積の検討を行った.モデルハイエトグラフを適用し,畦畔余裕高以上の湛水を引き起こさない落水量を通水できる孔断面積を確保した上で,シミュレーションを行ったところ,円形孔型や正方形孔型と比較して,より横縦比の大きい孔形状が,ピーク流出量抑制効果,日常水位管理への影響の軽減の要件で高い優位性を有することが明らかになった.一方,横縦比が大きい形状の場合,鉛直高が小さくなりゴミ詰まりによる孔閉塞が懸念されるため,孔形状の設計においては鉛直高に下限値を設けた上で,要件(1)(2)(3)を満たす水平幅を決定する必要があることを示した.

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© 2010 公益社団法人 農業農村工学会
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