農業農村工学会論文集
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研究論文
非灌漑期の農業水路における魚類の移動と越冬
皆川 明子高木 強治樽屋 啓之後藤 眞宏
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2010 年 78 巻 5 号 p. 369-376

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抄録

農業水路における魚類の越冬場を考える上での基礎的知見を得るため,三重県松阪市櫛田川下流の農業水路を対象に,非灌漑期から灌漑開始直後にかけて魚類の移動と環境条件について調査を実施した.月ごとの総採捕数の変化から,魚類は12月まで越冬場となる深みへと集合する傾向が見られ,標識再捕獲調査の結果では,1月から2月にかけては深みからあまり移動しなかった.また,1月の種数および各魚種の生息密度と最大水深との間には正の,平均流速との間には負の相関関係が認められた.特にドジョウとメダカでは水深60cmまでは水深が大きいほど越冬に有効と考えられる.しかし,フナ属については水深に加えてカバーが必要と推察される.なお,非灌漑期に越冬場で標識した魚類は,灌漑開始後に周辺の一時的水域へと移動し,再捕によって確認された移動距離は7割以上が200m未満であった.

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© 2010 公益社団法人 農業農村工学会
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