利尻礼文サロベツ国立公園に含まれる沿岸湖沼群の水文特性を明らかにするために,湖水,河川水,地下水を対象に環境同位体を指標とした調査・解析を実施した.放射性同位体である222Rnが検出されないことから湖水への地下水流入が存在しないことが示され,地表流出入が存在しない湖沼群は,降水によって涵養される閉鎖性湖沼であることが明らかとなった.水素・酸素安定同位体比より,湖水は蒸発の影響を受けていることを示した.動的同位体分別を考慮した同位体収支式から,供給された降水に対する湖水の蒸発損失の割合を14.4~71.9%(平均45.1%)と推定するとともに,各湖沼の蒸発の影響と湖沼の形状との関係を示した.さらに,対象とした湖沼群は地下水流動系において涵養湖として位置付けられ,湖沼群の水文環境には降水と下流側の地下水位が大きく影響することを明らかにした.