東北タイの天水農業地域における圃場溜池の整備がコンケン市郊外の村の農業の多様化に与えた影響について,圃場溜池の水利用実態をもとに分析し以下の知見を得た.1)ノンセン村では雨季の稲作,サトウキビ,キャッサバを主体とした農業がまだ主流であるが,圃場溜池が整備されて以降,溜池を利用した養魚の急速な普及,野菜や果樹への溜池の利用が進展し,溜池が農業多様化の推進に大きな役割を果たしていることが認められた.2)溜池の普及により家畜(牛と水牛)の飼育方法が変化し,夜には家に連れ帰られていた家畜(牛と水牛)が,昼夜ともに農地に放牧されるようになった.3)溜池の水量については規模の小さい圃場溜池にもかかわらず,乾季においてもほとんどの池が「十分」あるいは「ほぼ十分」と回答しており,溜池の水が無くなるほど大量に利用されている池は少ない.