獣害集落診断手法として,地区実態調査と獣害実態調査を水田農業集落に適用し,アンケート調査および対策改善状況から有効性を考察した.その結果,地区実態調査では,全戸対象の意向調査から,地区協働による獣害対策を提案する客観的根拠が見いだされ,スムーズな合意形成に結びついた.また,獣害実態調査では,加害動物の出没状況が視覚的に把握され,既存対策の欠点等を地区住民が学ぶ機会を提供し得た.さらに,両調査の組み合わせにより,荒廃地の刈り払いや非農家の参画の重要性等,総合的な獣害対策の重要性が明確になった.加えて,調査への住民の参画が学習機会となり,獣害対策の改善に向けた合意形成につながった.