本研究では,兼業化が進行した茨城県福岡堰土地改良区受益地を対象に,用水管理と水田管理を詳細に調査することにより以下を明らかにした.1)関係農家数が多い支線用水路では分水工は開放状態で維持され,各農家は小用水路の分水工や各水田の水口を操作することで取水量を調整していた.2)幹線用水路の中流部の農家は代かき時期の取水開始を早めるなど,上下流間での用水競合を避ける用水管理を行っていた.3)代かきと田植え作業は毎年同じ時期に実施されていた.一方,刈り取り作業は委託する兼業農家が多いため水稲の生育状況に応じて実施されていた.4)兼業化稲作地域では1本の支線用水路に関係する農家数が多く,また,ほとんどの農家が日中不在であるため,用水需要に応じて分水工を操作することは困難であり,配水管理用水量は増加する傾向にある.