土地利用・耕作状況が異なる地目からの水文流出過程を表現する分布型水循環モデルを構築するとともに,それを耕作水田・耕作放棄水田が主体の流域に適用して,そこでの流域水循環と水田管理状態の相互関係を評価した.まず,時間間隔1日の長期流出計算により解析対象の降雨発生時のモデル状態量を得て,これを短期流出計算のモデル初期値とした.次に,時間間隔10分の短期流出計算を行った結果,構築したモデルにより,出水時の流量ピークと逓減や試験流域間の短期流出特性の違いをよく再現できることを示した.さらに,降雨発生時のモデル状態量の比較から,試験流域間で短期流出特性に違いが生じた降雨時には,耕作放棄水田があるメッシュの飽和帯からの余剰地表流量が耕作水田のそれより大きく,この差が試験流域間の短期流出特性の違いの一因であると推察された.