有機物のメタン発酵処理後の残渣物(メタン発酵消化液;消化液)は,特にアンモニウム態窒素(NH4-N)を多く含むため速効性肥料としての農地利用が期待される.しかし,同時に消化液施用土壌からの硝酸態窒素(NO3-N)の溶脱が懸念される.そこで本研究では,土壌への有機資材投入が消化液由来の窒素の動態,特に溶脱量に与える影響をカラム実験で調査した.積算溶脱NH4-N量は有機資材投入による影響を受けなかった.有機資材のおが屑と剪定枝の投入は,消化液からの投入N量に対するNO3-N溶脱率をそれぞれ16%と22%減少させた.有機資材にNO3-Nが物理的に保持されたことや,実験後の土壌でバイオマス量が増加したことから有機資材投入により窒素が有機化されたことが,土壌からのNO3-Nの溶脱量低下に貢献したと示唆された.