農業農村工学会論文集
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研究報文
ナギナタガヤ草生栽培がカンキツ園における表面流去水の粒径画分別リン濃度に及ぼす影響
山家 一哲杉山 泰之高橋 和彦
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2014 年 82 巻 5 号 p. 321-327

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抄録

樹園地の表層土壌に集積した肥料由来のリンは, 降雨によって懸濁態として流出することが知られている.カンキツ園におけるナギナタガヤ草生栽培が, 降雨時に流出する懸濁物質の粒径分布と粒径画分別リン濃度に及ぼす影響を, カンキツ生産が盛んな静岡県浜松市において傾斜ライシメーターを用いて調査した.草生区において流出した懸濁物質は, 1~10 µmの粒径頻度が86%を占め, 10 µm以上の粒径頻度は1%と非常に低くなった.一方, 裸地状態を維持した清耕区では1~10 µmの粒径頻度が62%と最も高かったが, 10 µm以上の粒径頻度は32%と草生区より高かった.草生区から発生した表面流去水中のリン濃度は, 測定したすべての粒径画分において清耕区より低かった.草生区における0.45 µm以下, 0.45~1 µm, 1~10 µm, 10 µm以上の粒径画分リン濃度は, それぞれ清耕区の33%, 36%, 6.3%, 5.8%となり, 草生区は, 特に1 µm以上の粒径の懸濁態リン濃度を減少させることが示された.また, リン濃度に表面流去水量を乗じた粒径画分別のリン流出量についても, 草生区は測定したすべての画分において, 清耕区の26%以下に減少させることが併せて示された.

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© 2014 公益社団法人 農業農村工学会
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