農業農村工学会論文集
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研究論文
水田灌漑地区における排水路内貯留水利用の定量的分析
― 茨城県五霞町パイプライン化事業の事例 ―
谷口 智之宇田川 啓太
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2014 年 82 巻 6 号 p. 349-356

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抄録

本稿では, 還元水の地区内反復利用の実態とその時間変化を明らかにするため, 茨城県五霞町のパイプライン灌漑地区を対象に, 幹線排水路内貯留水の水収支を分析し, 以下を明らかにした.1)地区内ポンプが停止する夜間の排水路内貯留水量の変動から, 水田還元水量は14.3mm/dと推定された.2)排水路内の貯留水利用量は平均3.6mm/d, 地区内全ポンプの総取水量は平均19.2mm/dであり, 総取水量の19%は還元水で賄われていた.3)本地区では夜間に蓄えられた排水路内貯留水を翌日の午前中に利用することで, 河川からのピーク揚水量を最大で1.0m3/s以上低減させていた.4)還元水量に対して貯水容量が小さい地区の残水率は大きな日内変動をもつ.5)ポンプ運転費用節減と水量確保の観点から, 本地区では事業完了後も下流部ポンプの水槽と排水路の常時接続が望ましい.

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© 2014 公益社団法人 農業農村工学会
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