2015 年 83 巻 1 号 p. 1-9
この研究は,再現期間が200年,500年といった極めて大きな確率水文量の推定精度を向上することを目的に,気象庁の気象観測所のうち83箇所の年最大日雨量を用いて解析を行ったものである.一般化極値分布関数の3つの母数のうち形状母数と呼ばれる母数kの値は83観測所のうち71箇所で-0.2~0.0の範囲にあり,地域ごとにあるいは日本全域において一定値に収束する傾向にあることを見出した.また母数kを固定することにより,大半の観測所で一般化極値分布関数が,適合性に優れ安定性も実用上許容できる範囲に収まることが判明した.これにより,資料数が十分でない観測所においても,母数kの値に地域の代表値あるいは全域代表値(k=-0.1)を用いることにより,今までより高い精度で確率水文量を推定することが可能となった.