集落ぐるみのサルの追い払いの未実施集落へのヒアリング調査により,集落ぐるみの追い払いの実施を阻害する要因を明らかにし,求められる行政支援策について考察した.その結果,集落の意思決定過程の「問題の認識」段階に課題を抱える地区が多いことがわかった.また,集落ぐるみでの取り組みの阻害要因として,①サル被害が,被害の許容や営農者の減少,他獣種の優先等の理由で,解決すべき問題として認識されないこと,②簡易な個別追い払いの経験に基づく,集落ぐるみの追い払いの効果に対する否定的評価,③高齢者や女性,農業外就業者の不参加により対策の担い手が確保できないこと,が明らかになった.今後の行政支援策としては,効果や担い手に関する正しい情報の伝達および,多様な主体の参加獲得に留意した普及啓発事業の実施が必要である.