本報では,メタン発酵施設(「施設」)の建設後,農地での消化液の散布・施用量が施設計画で想定された消化液の生成量と年間収支が取れるようになるまでの期間(「立上げ期間」)の施設での原料の受入量の設定などの運営計画の策定を検討した.検討に当たっては,施設での物質収支を年単位及び日単位で算定する評価ツールを作成して試算を行った.試算によると,施設の運転開始時期(月日)は,当該年の農地への消化液の散布・施用開始前であれば,消化液の散布・施用を当該年に実施でき有利と考えられた.一方,立上げ期間に8年と長期間を想定した試算では,運転開始数年間のメタン発酵槽のCODCr容積負荷が設計時の値の半分未満となった.このケースでは,メタン発酵槽を2槽に分けて消化液の液肥利用の普及に応じて,1槽ずつ整備するような対応が示唆された.