2017 年 85 巻 2 号 p. I_177-I_183
食料・農業・農村基本計画をはじめとする種々の政策目標の一つに,情報通信技術(ICT)を活用した水管理の省力化が挙げられている.一方,ICTを活用した水管理に対応した機器の開発は発展途上であり,省力化効果の検証はほとんど行われていない.本研究では携帯情報端末で稼働させられる自動給水機を設置した場合の効果について,耕作者の作業車両に装着した簡易型GPS記録装置で行動軌跡を収集することにより,慣行の水管理と作業効率を比較した.その結果,慣行と比較して自動給水機を利用した場合,1給水栓あたり,10aあたりの給水栓操作時間は,それぞれ27%,41%削減された.また,集約化された圃場水管理では,移動を含めた水管理時間全体に占める給水栓操作時間の割合は半分程度と大きく,給水栓操作時間を削減することによる水管理省力化の効果は大きいと考えられる.