本研究では, 台湾の農地転用制度と転用の現状を明らかにし, 日本の現状との比較から, 台湾において優良農地の無秩序なスプロールが進む制度的背景を考察した.その結果, 台湾では, 地目変更を伴わない農業用地の農舎建設により, スプロールが進む現状を明らかにした.またその背景を①農業用地の使途の広さ, ②農地の権利移動規制の解除, ③農舎に係る規制運用体制の不備, ④違法な農地転用を相互監視する地域コミュニティー力の未活用, の4点にまとめた.新規参入者に権利移動された農地が農業に確実に利用されるよう農地の使途や転用を厳しく規制することや, 農地転用に対する社会規範の構築が, 持続的な農地保全を実現する上で必要不可欠であることを指摘した.