2019 年 87 巻 2 号 p. I_239-I_249
本研究は, 少量頻繁灌漑圃場において土壌水分状態や水フラックスを評価し, これに基づいて消費水量を精度よく定量化することを目的とする.まず, HYDRUS 2D/3Dを用いて少量頻繁灌漑圃場における灌漑後の土壌水分動態を予測するシミュレーションモデルを構築した.本モデルの妥当性を検証し, 土壌水分特性パラメータや境界条件などの入力データを得るために, ミニトマトが栽培されているビニルハウスで現地観測を行った.本モデルによって水フラックスを計算した結果, 対象圃場では, 灌水後の土壌水分の下向きへの移動は表層付近のみで生じており, 深い層における重力水の排水はほとんど生じていないことが明らかになった.また, 水平方向の土壌水分の変化が極めて小さいため, 一次元的場を対象とした消費水量算定方法の適用が可能であることが示唆された.