本研究では, タイ東北部を対象に人口分布・土地利用・営農の違いが考慮可能な水資源・窒素負荷量推定モデルを構築・適用し, 1 km解像度での窒素排出負荷量の空間分布を推定すること, 立地や水文条件に応じた土地利用別の排出負荷量の偏在を示すこと, 施肥量増加に伴う窒素排出負荷量への影響を評価することを目的とした.降雨流出解析には完全分布型TOPMODELを用い, 降雨流出解析から得た各土地利用メッシュの水収支と窒素動態モデルを用いて, 窒素排出負荷量を推定した.構築したモデルの計算結果は河川流量と窒素排出負荷量の季節変動を精度良く再現した.その結果, 森林からの窒素排出負荷量は0.11~6.9 kg・ha-1・year-1の範囲に分布し平均0.81 kg・ha-1・year-1, 農地からの窒素排出負荷量は0.15~13 kg・ha-1・year-1の範囲に分布し平均2.5 kg・ha-1・year-1であった.市街地は0.15~41 kg・ha-1・year-1と幅広く分布し平均6.5 kg・ha-1・year-1で, 森林や農地と比べて窒素排出負荷量は高いことを示した.