南海トラフ地震等の巨大地震への備えとして, ため池の防災技術を確立することは重要かつ喫緊の課題である.著者らは, 海岸堤防の耐震対策として施工実績を有する, 靱性に優れた鋼矢板によるため池堤体の補強工法について検討している.ため池堤体を対象とした模型実験として浸透実験・加振実験・越水実験を実施した結果, 従来工法であるおさえ盛土工法は法面の変形抑制を狙いとしていることから, 巨大地震時に生じる基礎地盤の液状化に対しては対策効果が限定的であることを確認した.一方, 堤体内に鋼矢板を設置した場合, 揺れによる堤体の損傷を最小限に留めつつ, 越流による被害を軽減する効果を発揮することが確認された.