本研究は,村の小規模なため池を利用した組織的な灌漑の実現可能性と課題を明らかにすることを目的とする.このため,ガーナ国ノーザン州の州都タマレ近郊でため池を利用した補給灌漑稲作の農業者参加試験を行い,農業者による規約に基づく灌漑管理,資金管理,組織運営について実態を調査,分析した.その結果,農業者は,1) 規約に則った組織的な灌漑により収量を増加させることができる,2) 灌漑に必要な燃料費相当分の支出ができる,3) 規約のうちペナルティの存在を高く評価している,4) 補給灌漑稲作を増収効果の高い栽培方法と認識しており組織的な灌漑を行う動機を有していることが示された.課題として,農業者間の連絡調整の向上,より均等に配水できる圃場条件の整備が挙げられるとともに,資金管理や規約の定着には教育的支援や外部からの介入が必要であることが示された.