2020 年 88 巻 2 号 p. I_281-I_294
扇端部小河川への地下水流出の実態を流量観測やラドン・水温などの測定によって明らかにした.河床から流出する地下水は,その水質が扇端部の自噴井や揚水井としてみられる地下水のものと異なることから,自噴井や揚水井をもたらす地下水とは異なる流動経路や涵養源による地下水の影響を受けていると推定された.自記水温観測では河川の上下流で水温差が開く現象がみられ,断続的な地下水流出が推定された.相互相関解析から,夏期にはまとまった降水から地下水流出まで約2–3日の短い時間スケールのプロセスがあり,一方で冬期には周囲の水田の湿潤状態が持続的な地下水流出に寄与していると推定された.以上から,扇端部小河川への地下水流出は,自噴井をもたらす広域の地下水流動とは異なる局所的な水文過程によるものであり,降水だけでなく周囲の水田の水管理が関与しうると考えられた.