2021 年 89 巻 2 号 p. I_353-I_362
近年,平野部水田水域での減少が著しいトウキョウダルマガエルについて,水田の水管理が本種の再生産に与える影響に着目し調査を行った.2017年及び2018年においては幼体の発生状況と水管理の関係を水田団地(水田及び水田に隣接する水路系)で調査した.水田団地での調査からは,中干期が長期にわたると幼体の個体数密度は低い値で推移し,中干期が短期間であると個体数密度は高い値を示すことが確認された.2019年においては幼生及び幼体の発生状況と水管理の関係を水田1筆毎で調査した.水田1筆毎での調査からは,水管理により幼生及び幼体の発生状況が異なり,中干が行われた水田では中干後の幼生及び幼体の発生が確認されず,中干が行われなかった水田では幼生から幼体まで様々な成長段階の個体が断続的に確認された.以上より,中干は幼生の生息場を消失させることにより幼生期の斃死率を高めている可能性,本種が移動可能な範囲を越えて中干が同期した場合,成体の産卵場を消失させ複数回の産卵を阻害している可能性を示した.