抄録
火山灰地帯の水田はその土壌のもつ特異性から一般に漏水が著しく大きい。著者らは, チュウ積砂質漏水田におけるベントナイト客土と同様火山灰質漏水田の過剰浸透を合理的に抑制するための改良方法を明らかにするために本実験に着手した。本実験においては, まず第一段階として, 火山灰土壌におけるベントナイトの透水抑制効果を低下させる因子について考察したが, さらに明らのかにした諸点をあげれば次のとおりである。
1. 火山灰質漏水田において, チュウ積砂質漏水田と同等の抑制効果を期待するためには, それの場合の5智6倍もの多くのベントナイトを客入しなければならない。
2. 火山灰土壌がチュ積土壌と相違する点は, 前者は粘土鉱物として多少ともアロフェンがあるのに後者にはそれがない。また, 前者が後者の約20~30倍も活性アルミナが多いことである。
3. 土壌-ベントナイト混合系において, 一般に分散が抑制され, S.Vは原土とほとんど変らずlooseで, 膨潤量が抑制される傾向にある場合にベントナイトの透水抑制効果が低下することがわかった。
4. 火山灰土壌とベントナイトを等量混合して18カ月間水中に分散放置した試料は一般に膨潤量が低下するが, 同様に処理したチュウ積土壌は低下しない。
5. 膨潤量が抑制される原因が客入ベントナイトの結晶格子層間が影響されるためと考え, 膨潤量測定した試料についてX-線回折を行ったところ, 層格子間には何ら影響はなかったので膨潤量の低下はベントナイトと火山灰土壌の表面的な結合のあり方によるものと推察された。
6. 従って, 火山灰土壌中でベントナイトの透水抑制効果を低下させる因子は, Fig.2並びに分散, S.Vあるいは膨潤性などを相関連させて比較検討した結果, Table1で明らかなように, 各種火山灰土壌中に共通して顕著に含有される活性のアルミナであろうと推察した。
7. そこで, Al-mont. とNa-mont. との混合系の性状並びに火山灰土壌中のアロフェン類似の試料としての合成抱水ケイ酸アルミニウムーNa-mont. 混合系におけるNa-mont. の分散性から, 推論した因子の妥当性を実証した。
以上から, 火山灰土壌中に多量に含まれている活性アルミニウムがベントナイトの透水抑制効果を低下させる因子であることが解明されたので, 今後, 何らかの簡易な処理によってベントナイトをチュウ積砂壌土と同等量程度, あるいはそれ以下で火山灰質漏水田の過剰漏水を抑制できるような改善方法を究明したいと考えている。