谷津田地域の農業水路と, これに隣接する畦畔に生息するクモ類の炭素安定同位体比 (δ13C) を, 生活型ごとに解析した. 造網性種の平均値は-26.0%. となり, 里山から供給された有機物に依存する, 水路から羽化した昆虫の影響を受けていた. 樹上俳徊性種のδ13Cは造網性種に近かったが, 標準偏差は造網性種と比べて大きかった. 地上俳徊性種のδ13Cは-22.2%. となり, C4植物の影響を受けて高くなった. 地上俳徊性種のδ13Cはクモ類を支える食物連鎖の植物群落におけるC3植物とC4植物の割合を反映しており, その体を構成する炭素の約1/3がC4植物由来と考えた. 里山と水田の間のエコトーンである谷津田の水路周辺において, 生物を通じた物質フローの多様性を, δ13Cを用いてとらえることができた.