2008 年 2008 巻 256 号 p. 397-403,a2
小貝川上流域のホトケドジョウについて, 集団構造の遺伝解析に用いるマイクロサテライトDNAの遺伝子座を選択し, 選択された遺伝子座による集団解析を予備的に行った. 既存の17と新規の2遺伝子座を対象に, 小貝川上流域5地点及び近隣の荒川上流域1地点の計6標本を分析した結果, 12遺伝子座の利用が可能であると判明した. これらの遺伝子座を用いた解析により, 各標本の1遺伝子座あたり平均対立遺伝子数は4.4~5.3, 平均ヘテロ接合度は観察値で0.527~0.661, 期待値で0.581~0.657となり, どの標本も同等の遺伝的多様性レベルをもち, 任意交配している集団と考えられた. 標本間における遺伝的分化の尺度は小貝川上流域内 (FST=0.078) よりも小貝川一荒川上流域間 (FST=0.147) で大きくなり, 標本の遺伝的差異は流域間で大きいことが推察された.