長い歴史をくぐりぬけてきた文化財は,歴史的に重要な情報を豊富に含んでいるが,それを活用するためには,そもそも文化財が持つ歴史的な意味への自覚と,調査の積み重ねによる情報の蓄積が不可欠である.調査の視角は時代的な制約や学問分野による偏りが避けられないため,調査の歴史自体,文化財情報の再発掘の長い過程と言える.この報告では古文書のようなテキストをともなう文化財を素材として,その伝統的な調査プロセスや事例を紹介しながら,過去からの文化財情報の蓄積についてより幅広い社会的共有を実現するために必要な課題を指摘する.