情報知識学会誌
Online ISSN : 1881-7661
Print ISSN : 0917-1436
ISSN-L : 0917-1436
研究論文
ラマン散乱分光イメージング法による多色摺木版画の色材分子分布解析法の開発
南川 丈夫永井 大規金子 貴昭谷口 一徹原田 義規髙松 哲郎竹中 健司
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 26 巻 1 号 p. 1-10

詳細
抄録

 錦絵をはじめとする多色摺木版画において,色材は木版画を特徴付ける重要な要素である.そのため,色材の分子構造および分子分布の詳細な解析が実現されれば,江戸時代の錦絵制作過程の重要な一部を推察することができる可能性がある.そこで本研究では,分子構造を強く反映した情報が得られるラマン散乱分光法に着目し,色材の分子構造と空間分布を同時に解析が可能な非侵襲的色材解析法の開発を行った.その結果,ラマン散乱分光法を用いることで色材の分子構造解析およびその空間分布を可視化することに成功した.特に,紙面内イメージングから紙の繊維上の色材分布を可視化することに成功した.また,紙面と垂直方向のイメージングから,色材の立体的空間分布を可視化することに成功した.さらに,膠含有/不含色材の空間分布の違いも明らかにし,色材分布に基づく摺刷技術解析の可能性を示した.以上の結果から,本手法は多色摺木版画制作技法の新たな解析手法となると考えられる.

著者関連情報
© 2016 情報知識学会
次の記事
feedback
Top