2025 年 35 巻 1 号 p. 18-29
近年,予測不可能な時代と言われる中で,ソフトウェア開発は,不確定要素を含む案件や戦略的製品・サービス開発のために,アジャイル型開発モデル(以降: アジャイル開発)で開発を推進する企業が増大している.一方,日本企業では情報システム構築の際,ITベンダに委託する,もしくは,一部を委任する形態が定着しており,双方の意識の相違から生じるコンフリクトに関わる研究も確認される.この形態はDXをアジャイル開発で共創する今日も変わっていない.本研究では,アジャイル開発において,ユーザ企業,ITベンダ間でのコンフリクトの要因となりえる意識の相違はないかを問いとした.そこで,アジャイル開発を推進する企業の実務家8名にインタビュー調査を実施し,語彙の頻出度による分析を行った.その結果,ユーザ企業側では,経営,投資に対する意識が高く,ITベンダ側では,予算,チーム,プロダクト,契約,お客に対する意識が高いことが明らかになった.