「保険契約の錯誤による無効の問題は,主として,生命保険契約における告知義務違反(商法678条)の問題と関連し,錯誤について定める民法95条は商法678条によって適用排除されるのか,保険者が被保険者の健康状態に関する判断を誤ったことが要素の錯誤に該当するか等について論じられてきた。また,とりわけ,変額保険契約の有効性を巡って,保険契約者側に錯誤があったとして当該契約を無効とするものも多い。
これに対して,近時,保険者が錯誤による契約無効を主張する事案がみられる。そこで,本稿において,保険者の錯誤に関する主な裁判例(告知義務違反の事案は除く。)を概観し,その問題点を探る。」