2008 年 2008 巻 600 号 p. 600_65-600_84
わが国における金融自由化の過程を欧米諸国と比較してみると,日本的特色として,業務範囲の自由化が重視されてきたことを指摘できる。たとえば,金融機関利用者のメリットに直結する金利・株式売買手数料・保険料率等の自由化,特に小口取引に関わる自由化が,1990年代半ばから2000年にかけて完了した事実こそ,こうした日本的特質を明白に物語っているのである。
損保業界も同様であり,2000年6月に料率自由化を完了している。一方,生保業界では,1960年代から契約者配当の自由化を実施してきたわけだが,利用者に周知する努力を欠いたため,こうした事実は意外と知られていない。
本論では,旧大蔵省銀行局保険部の監督下にありながら,料率自由化に関し全く異なる対応を見せてきた生・損保両業界に注目し,自由化の経緯・経営面への影響等を比較・検証する