2008 巻 (2008) 602 号 p. 602_1-602_30
明治20年代に,各宗仏教団体を中心とするか又は宗教団体を背景とする生命保険会社が続々と設立されたことは,わが国の生命保険業史上における特徴の一つに挙げられている。わが国で仏教教団が生命保険事業へ進出した理由を解明するには,個別の仏教系生命保険会社の内部史料を用いて分析することが必要となる。本稿では,真宗信徒生命に関与した本願寺の『定期集会筆記』という議会議事速記録を用いて,真宗信徒生命の設立理由を検討した。その結果,キリスト教に対する危機感を幕末・維新期から醸成していた本願寺教団が,外国人の内地雑居を目前に控え,キリスト教対策の慈善事業費を調達することを目的として設立された会社であることを明らかにした。そして,その中心には,赤松連城や島地黙雷といった留学経験のある役僧がいたことが明らかとなった。