2008 年 2008 巻 603 号 p. 603_127-603_146
慢性的な労働力不足の時代に脚光を浴びた企業福祉は,雇用調整の時代を迎えて大きく変容しつつある。わが国では99年から雇用調整が本格化して正規雇用が大幅に縮小した。企業福祉の主な対象である正規社員が減少すれば団体保険の被保険者も減少する。事実,正規社員は06年までに12%減少し,団体保険の被保険者はそれを上回って減少した。人件費効率化を促す経営環境は今後も続くことが予想されるだけに,生命保険会社は安定した事業基盤を維持するための有効策を打ち出す時期にある。
雇用調整が進む側らで,非正規社員,若年層等の労働力不足は常態化しつつある。良質な労働力を安定的に確保する方策のひとつとして企業福祉を再評価する動きも見られる。生命保険会社はこれまで正規社員の有配偶者層等を主な顧客層と想定してきたが,今後は多様な顧客層を想定したうえで,企業の人件費効率や生産性向上あるいは企業福祉格差にも配慮した提案を心がけたい。