2009 年 2009 巻 606 号 p. 606_137-606_151
本稿は,弁護士賠償責任保険契約に関する法的諸問題について,争訟費用の支払範囲が問題とされた裁判例及び弁護士賠償責任保険契約に適用される弁護士特約条項3条1号後段の適用が問題とされた裁判例での争点を中心に検討を加えることを目的とするものである。私見では,被保険者が他の弁護士を訴訟代理人として選任せず自ら訴訟遂行した場合には,保険者に対し争訟費用の請求は認められないと考える。また弁護士特約条項3条1号後段は,弁護士としての職業倫理に反する行為を免責とする趣旨で設けられたものと考えるべきであり,平均的な知識・経験を有する弁護士であれば,法律の専門家としての規範的認識として他人に損害を与えることを具体的に予見でき得るにもかかわらず行為することを意味するものと考える。