2010 年 2010 巻 608 号 p. 608_113-608_131
わが国の通説・判例は,保険契約者の債権者による解約返戻金請求権の差押えおよびその取立権に基づく生命保険契約の解約権の行使を認める。その前提には,生命保険契約と金融商品一般をほぼ同一に扱う,生命保険契約上の債権を通常の金銭債権とほとんど変わりないとする考えが存在する。最高裁判決に必ずしも同調しない下級審決定があらわれ,この議論が収束したわけではないことを確認し,いわゆる二分説による生命保険債権保護を再評価する。加えて,最高裁判決が示した権利濫用法理に実効性を持たせるための試論を提示する。