2011 年 2011 巻 613 号 p. 613_149-613_167
税理士職業賠償責任保険約款には,加算税・延滞税及び納税者が納付すべき本税を免責とする条項があり,この設定趣旨については説が分かれているが,平成15年最高裁判決は設定趣旨を納税申告の不正の助長を防止するためと解し,設定趣旨に反しない場合に免責を否定した。しかし,保険者と保険契約者の意図は一律の免責にあり,平成16年に免責条項を改訂した。この経緯にもかかわらず,本稿で素材とした東京高裁平成21年1月29日判決は改訂後の免責条項適用を否定した。そこで,本稿は,約款文言を重視する立場から,まず,改訂の効力について検討し,平成15年最高裁判決は保険者と保険契約者の合意による免責条項設定を否定したものではなく改訂は有効と解した。そのうえで,税理士の過誤と免責事由該当事実との因果関係の必要性についても約款文言に沿った解決を求め,また,免責条項における「税額」の意義につき平成19年改訂にも触れ,考察したものである。