保険学雑誌
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「保険事業とERM」―平成23年度大会共通論題―
保険事業とERM:保険事業におけるERMシステムの構築と課題
羽原 敬二
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2012 年 2012 巻 617 号 p. 617_19-617_36

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抄録

ERMは,一般に認められている定義はなく,統一されたとらえ方があるものでもない。ERMは,保険会社がリスクと資本のバランスをとりながら継続的に収益を上げていくための管理手法であり,ERMの導入は,企業価値の安定的な向上が,結果的には保険契約者保護に繋がるがるという考え方に基づいている。リスク定量化の技術が不十分であったことが経営破綻の原因となった保険会社はなく,あくまでリスクの存在を経営者が認識していなかったか,リスクについて認識していても有効な対策をとらなかったか,または経営判断を誤ったことが,破綻の主な原因であるとされる。したがって,リスク量を正確に計測することよりも,ERMの実施によってリスクを可視化することに価値がある。ERMの導入または定着を成功させるには,経営者の理解と主導に基づき,ERMと事業戦略および日常業務が密接かつ直接に結びついて効果的に実施されることが求められている。

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© 2012 日本保険学会
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