2012 年 2012 巻 617 号 p. 617_53-617_72
ある業種なり企業なりのERMは「全社的リスクマネジメント」「統合的リスクマネジメント」「コーポレートガバナンス」「内部統制」「戦略的リスクマネジメント」「制度的リスクマネジメント」という6つのコンポーネントからなる三次元モデルで捉えることができる。最近の実態調査によると,保険業と一般事業とで,ERMの導入が容易でないことは同様であるが,保険業の場合には,「ソルベンシー目的のERM」であるという特徴が顕著である。ソルベンシIIを始めとして,現代のソルベンシー対策は,保険(ハザード)リスクやファイナンシャル・リスクのみならず,オペレーショナル・リスクや戦略リスクなども含めたあらゆるリスクを対象とするものであり,ERMなしにはあり得ないということである。それ故,保険会社のERMは「統合的リスクマネジメント」「内部統制」「制度的リスクマネジメント」の領域に軸足を置くものになっているといえる。